相続とは、人が亡くなった際に、その方が生前に所有していた財産や権利・義務を、法律で定められた相続人が引き継ぐことをいいます。相続の対象となる財産には、預貯金・不動産・車などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産が含まれる場合もあります。
遺言書がある場合には、遺言の内容に従って財産を分配することができますが、遺言書がないときには、民法で定められた法定相続分に基づいて遺産を分割することになります。相続の手続きには、戸籍収集・財産調査・名義変更など多くの作業が必要となるため、行政書士などの専門家のサポートを受けることで、手続きを円滑に進められる場合があります。
なお、相続の対象は財産に関する権利や義務に限られ、被相続人の資格や職業、地位などのような一身専属的なものは引き継がれません。たとえば、被相続人が医師や政治家であったとしても、その資格や地位が相続によって承継されることはありません。
相続はご家族の生活に関わる重要な手続きのため、正確な知識と準備が大切です。
相続手続き
相続とは

相続人になる人
相続が発生すると、亡くなられた方(被相続人)の財産や権利義務は、法律で定められた人に承継されます。相続人となる人は、民法で順番が決められており、まずは「配偶者」と「子ども」が基本となります。配偶者は常に相続人となり、これに子どもが加わる形が最も一般的です。
子どもがすでに亡くなっている場合には、その子(被相続人の孫)が代わりに相続する「代襲相続」が生じることがあります。子どもがいない場合には、父母や祖父母といった直系尊属が、その次の相続人となります。直系尊属もいない場合には、亡くなられた方の兄弟姉妹が相続人となります。
兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子(甥・姪)が代襲して相続することもあります。ただし、配偶者・子ども・父母・兄弟姉妹が全く存在しない場合には、法定相続人はいなくなり、財産は国庫に帰属します。
このように、相続人となる人やその順番は法律で明確に決められていますが、養子縁組や再婚、相続放棄、認知などが関係する場合は、相続関係が複雑になることもあります。ご家族構成や手続きに不安がある方は、行政書士等の専門家に相談されることで、円滑な相続手続きにつながります。

相続人になれない人
相続では、亡くなられた方と関係が深いように見えても、法律上は相続人と認められないケースがあります。たとえば、内縁の夫・妻(事実婚の関係にある方)は、生活を共にしていても、法律上の婚姻届が提出されていない場合は相続人になれません。また、被相続人と長年同居し、介護を続けていた親族や親しい友人であっても、法律で定められた相続人に含まれない限り、相続の権利はありません。
さらに、相続人に該当する立場であっても、法律上の手続きが整っていないと相続できない場合があります。例えば、被相続人の子どもであっても、認知されていない場合は、法律上の相続人とは扱われません。また、養子縁組が成立していない「連れ子」も、相続の対象とはならず、実子と同じ扱いにはならない点に注意が必要です。
このように、関係が深いと思われる方でも、法律上の要件を満たさなければ相続人にはなれません。ただし、遺言書によって財産を受け取れる場合や、寄与分・特別寄与料といった制度によって一定の利益を受けられる可能性はあります。ご家族の事情によって対応が異なるため、相続でお悩みの際は行政書士等の専門家にご相談いただくことで、より適切な手続き選択につながります。
法定相続割合
遺言書がない場合や、遺言で指定されていない財産がある場合には、民法で定められた「法定相続割合」にしたがって遺産を分けることになります。法定相続割合は、相続人となる立場によって決められており、主に次のように定められています。
まず、配偶者は常に相続人となり、他の相続人と財産を分け合います。配偶者と子どもが相続人となる場合には、配偶者が2分の1、子ども全体で2分の1を分け合うのが一般的な割合です。子どもが複数いる場合は、この2分の1を均等に分割します。
被相続人に子どもがいない場合は、配偶者と父母(直系尊属)が相続人となり、配偶者が3分の2、父母全体で3分の1を分けます。父母のどちらかのみが存命の場合でも、その3分の1を受け取ります。
また、被相続人に子どもも父母もいない場合には、配偶者と兄弟姉妹が相続人となり、配偶者が4分の3、兄弟姉妹全体で4分の1を分けます。兄弟姉妹が複数いる場合には、それぞれが均等に分割します。
なお、子どもがすでに亡くなっている場合でも、その子ども(孫)が代わりに相続する「代襲相続」が認められることがあります。また、兄弟姉妹が相続人となるケースでも、兄弟姉妹が亡くなっている場合には、その子(甥・姪)が代襲して相続することがあります。
法定相続割合は、あくまでも「遺言がない場合の基本的なルール」であり、遺言書がある場合には遺言の内容が優先されます。相続の状況はご家族ごとに異なりますので、手続きでお困りの際は、行政書士等の専門家にご相談いただくことで、スムーズな対応につながります。
相続手続きの一般的な流れ
相続手続きは、段階ごとに進めていくことでスムーズに対応できます。
以下は、一般的な流れです。
- 死亡届の提出(7日以内)
- 火葬許可申請
- 葬儀・納骨の準備
2.相続人の調査・確定
相続関係を確認するため、戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まで連続したもの)相続人の戸籍謄本などを集め、法律上の相続人を確定します。
3.相続財産の調査
遺産として何があるのかを把握します。預貯金、不動産、有価証券、保険金、貸金庫、借金や未払い請求などの負債も確認します。
※財産と負債の両方を調査することが重要です。
4.遺言書の有無を確認
- 公正証書遺言がある場合→ 公証役場で確認
- 自筆証書遺言がある場合 →家庭裁判所で検認手続
5.遺産分割協議(遺言がない場合)
相続人全員で、「誰が何を相続するか」を話し合い、合意できた内容を遺産分割協議書として書面にします。
6.各種名義変更・解約・相続手続
遺産分割協議書または遺言書に基づき、預貯金の相続手続、不動産の名義変更(相続登記)、保険金請求、車の名義変更
7.相続税の申告(必要な場合)
相続税がかかる場合、
※税務手続は税理士にご相談ください。