任意後見契約は、ご本人の判断能力が低下してから効力が発生します。しかし、実際には、判断能力はあっても身体的な衰えや病気によって、生活や財産の管理に不安を感じる時期が必ず訪れます。
当事務所では、ご契約からご逝去後の手続きまで、途切れることのない一貫したサポートを可能にするため、「任意後見・移行型サポートパック」をお勧めしています。
このサポートは、ご本人の状況に合わせて以下の3つの段階で支援内容が自動的に切り替わるのが特徴です。
切れ目のない支援を実現する「任意後見・移行型」
任意後見契約「移行型」とは
本人の判断能力の低下を早めに察知 ー 見守り契約
見守り契約は、ご本人が元気なうちから将来に備えるための契約で、定期的な面談や状況確認を通じて、生活状況・健康状態・ご希望の変化などを把握し、必要に応じて今後の支援の検討につなげることを目的としています。
特に、将来、判断能力が低下した場合に備え、任意後見契約と併せて締結されることが多く、見守り契約の段階から継続的に状況を把握しておくことにより、後見開始が必要になった際も、依頼者の意思に沿った円滑な対応が期待できます。
なお、見守り契約は単独でも締結が可能ですが、この契約のみで財産管理や身上監護に関する法的な代理権が認められるものではありません。判断能力が低下した後の財産管理等を確実に行うためには、別途「任意後見契約」の締結が必要となります。
当事務所では、将来の安心につながる支援体制を重視しており、見守り契約と任意後見契約を併せてご利用いただく場合に限り、対応しております。
「見守り契約」でできることと、できないことを正しくご理解いただいた上で、ご本人が希望する将来の備えをご検討ください。
見守り契約で「できること」(行政書士の役割)
見守り契約で行うことができる内容は、契約書に定めた範囲で、ご本人の生活状況や心身の状態を把握し、安心して生活を続けるための支援につなげることを目的としたものです。
あくまで「見守り」であり、法的な代理権や財産管理権限が付与されるものではありませんが、将来の任意後見や必要な手続きに備えるための重要な役割を担います。主な内容としては、次のような項目が挙げられます。
電話、訪問、メールなどにより、契約に基づいた頻度でご本人の安否確認を行い、生活の様子や健康状態についてお話を伺います。
2.判断能力の継続的な確認
定期的な対話を通じて、ご本人の判断能力の低下傾向を早期に察知します。これは、任意後見契約を発動させるタイミングを見極めるための重要な役割です。
3.情報収集と整理
4.他の専門家への橋渡し
見守り契約で「できないこと」(明確な線引き)
見守り契約は、あくまでご本人の状況確認や連絡調整などを目的とした契約であり、法律上の代理権や財産管理権限が付与されるものではありません。
したがって、見守り契約だけでは行えない手続きや権限があります。代表的な「できないこと」は次のとおりです。
1.介護・医療・身体介助に関する行為
介護・身体介助:食事、入浴、排泄、移動などの身体的な介助や、家事代行といった生活援助を行うことはできません。これらは、介護保険サービスや民間の介護事業者が行う業務です。
2.医療行為
3.緊急時の駆け付け
4.財産管理・法律行為の代理
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5.契約内容にない義務の履行
契約書に明記されていない、過度な精神的・時間的な拘束を伴う活動(例:毎日長時間の訪問など)は、原則として契約の範囲外となります。
任意後見契約に付帯する「財産管理委任契約」
「見守り契約」によってご本人の状況を確認する段階において、まだ判断能力は低下していないものの、身体的な理由などでご本人がご自身の財産管理や各種手続きを行うことが難しくなる場合があります。
この、任意後見契約がまだ始まっていない期間に、ご本人の安心を確保するために締結するのが「任意代理としての事務委任契約」(以下、「財産管理委任契約」)です。
財産管理委任契約は、ご本人が判断能力を正常に有していることが前提となりますが、特定の事務について行政書士を「任意代理人」として定め、代わりに実行してもらうものです。
財産管理委任契約の役割
財産管理委任契約は、ご本人が正常な判断能力を維持していることを前提として、身体的な制約などによりご自身での手続きが困難な場合に備える契約です。
この契約を締結することで、行政書士を任意代理人として定めて、契約締結後(発効後)、直ちに日常の財産管理事務を代理で実行してもらうことが可能となります(任意後見契約が発効するまでの間)。
この支援は、あくまでご本人の意思(判断)に基づいて行われる任意代理であり、ご本人の意思に反して勝手に財産を処分することなどはありません。
財産管理委任契約で任せられる具体的な事務
財産管理委任契約において、行政書士はご本人の任意代理人として、専門知識を必要とする多岐にわたる法律・事務手続きを代行いたします。
具体的には、預貯金の入出金や定期預金の解約などの金融機関との取引、公共料金・家賃・税金などの支払い事務を代理します。また、賃貸物件の家賃受領や管理費の支払い、固定資産税の納付、リフォーム契約といった不動産管理に関する事務手続き、さらに介護・医療・見守りサービスなどの各種利用契約や解約手続き、保険会社への連絡や保険金請求事務も代行可能です。加えて、ご本人の財産全体の状況を正確に把握するための財産目録の作成を行い、将来の任意後見契約にスムーズに移行するための準備も担います。
なお、これらの事務はご本人の預金通帳や印鑑を代理人が管理する権限を伴うため、行政書士などの信頼できる専門家に委任することが不可欠です。